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Nola's Backyard

自由圏

有向グラフを、頂点集合 VV、辺集合 EE、各辺の始点と終点を与える写像

s,t:E⟶V s,t:E\longrightarrow V

の組 G=(V,E,s,t)G=(V,E,s,t) とする。この GG が生成する自由圏 F(G)F(G) を次のように定義する。

  • 対象
    • Ob⁡(F(G))\operatorname{Ob}(F(G)) とする
    • すなわち、F(G)F(G) の対象は GG の頂点である。
  • 射
    • x,y∈Vx,y\in V に対して、xx から yy への射の集合を
Hom⁡F(G)(x,y)={(e1,…,en)| n≥1, ei∈E,s(e1)=x, t(en)=y,t(ei)=s(ei+1)(1≤i<n)} \operatorname{Hom}_{F(G)}(x,y) = \left\{ (e_1,\ldots,e_n) \middle|\ \begin{array}{l} n\ge 1,\ e_i\in E,\\ s(e_1)=x,\ t(e_n)=y,\\ t(e_i)=s(e_{i+1})\quad(1\le i<n) \end{array} \right\}
    とし、さらに $x=y$ の場合に限り、長さ $0$ の空パス $()_x$ を加える。
    - したがって、射は $G$ 上の有限長の有向パスそのものである。特に、辺 $e\in E$ は長さ $1$ のパス $(e):s(e)\to t(e)$ として射になる。
  • 二つの射
p=(e1,…,en):x⟶y,q=(f1,…,fm):y⟶z p=(e_1,\ldots,e_n):x\longrightarrow y, \qquad q=(f_1,\ldots,f_m):y\longrightarrow z
の合成を、列の連結
q∘p=(e1,…,en,f1,…,fm):x⟶z q\circ p = (e_1,\ldots,e_n,f_1,\ldots,f_m):x\longrightarrow z
によって定める
- 空パスを含む場合も、空の列を連結しても列が変わらないものとして同じ式を用いる。

各 x∈Vx\in V の恒等射を

id⁡x=()x \operatorname{id}_x=()_x

と定める。有限列の連結は結合的であり、空列は連結の単位元なので、

r∘(q∘p)=(r∘q)∘p,p∘id⁡x=p,id⁡y∘p=p r\circ(q\circ p)=(r\circ q)\circ p, \qquad p\circ\operatorname{id}_x=p, \qquad \operatorname{id}_y\circ p=p

が成り立つ。よって F(G)F(G) は圏である。

Hint

「自由」とは、元の辺の間に、圏の公理から必要になるもの以外の関係を課さないという意味である。
例えば、二つのパスが同じ始点と終点を持っていても、それだけでは同じ射とはみなさない。一方、合成の結合律と恒等射に関する単位律は、圏であるために必要なので成り立つ。

Example

例えば、

A→fB→gC A\xrightarrow{f}B\xrightarrow{g}C

から生成される自由圏には、恒等射 ()A,()B,()C()_A,()_B,()_C に加えて、

(f):A→B,(g):B→C,(f,g):A→C (f):A\to B,\qquad (g):B\to C,\qquad (f,g):A\to C

が射として存在し、(g)∘(f)=(f,g)(g)\circ(f)=(f,g) である。グラフに閉路がある場合は、その閉路を任意の回数だけたどれるため、射が無限個になることもある。

Note

元のグラフから自由圏の台となるグラフへの標準的なグラフ準同型

ηG:G⟶U(F(G)) \eta_G:G\longrightarrow U(F(G))

は、頂点 xx を対象 xx へ、辺 ee を長さ 11 のパス (e)(e) へ送る。この写像が満たす普遍的な性質については自由圏の普遍性を参照。